273「染み渡る感情」

空き箱に詰めた 大量の荷物を
千鳥となった足で せっせと運んでく
思い出に染まった 心にあるボール
手の届かぬところで 着々と染まってる

手で抑えたところで 静まったりはしないよ
まだガタガタと揺らして こっちに出たがって
頭をちょっとだけ のぞかせて

黒く塗られた部分 そこには何があったろう
酷く塗りたくられて ちょっとじゃ落ちなくて
追求する気はないけど 少し気にかかってんだ


桐箱に入れた 色褪せぬ絵画は
さらに深味を帯びて 値打ちなくなってる
思い出に染まった 心の中 底の
行き着けないところも 僕色に染まってる

チャック閉めただけじゃあ 破れちゃっておしまいよ
だから蓋をしっかりとね 漏れ出してしまったら
すぐにかき集めて 眠らせて

上手く撮られた写真 ここには笑顔があふれる
キレイに現像され 光沢保ってて
多少の汚れ程度なら 少し払えば落ちる



モノクロ写真 その中に 困り顔が一人
カメラを見て 何を思ってる
僕には分からない



今は上手な絵すら いつか汚れてゆくだろう
少しずつ消えていき さらには朽ちていき
拭えた汚れ程度でも 広がって滲みていく
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