28「パレット」

遠くに見える景色 あれを描いてみようか
何を基準にしてみよう あそこの船がいいかな

色とりどりの絵の具で この景色を描いていく
波の動き 木々の揺れ方 鳥のさえずり
すべてが描くための材料で 僕は完成したものを浮かべてる

僕の想いで彩られた絵画 淡い色で表現できている
強調していなくとも 上手く伝わればそれでいい
「絵画なんてそんなもんだよ」って
僕はそう思ってる


空想上の景色 それを描いてみようか
僕の記憶が頼りで 消えたらもう描けない

鮮やかな色を使って 僕の世界を描いていく
雲の動き 陰の傾き 風の吹き方
ひとつでも欠けてしまえばすべてを パレットをも無駄にしてしまう

僕の記憶で描かれた世界 ハッキリした色で出来てる
滲んでしまったもんじゃ すぐに消えちゃうかもしれない
「腕をふるって描いたんだ」って
僕はそう主張する



使い古したパレット いろんな絵がよみがえる
すべてを担ったパレット 使い古しのように見えても
まだ使えるんじゃないかなって
小さな希望を持ってみる



繊細に描かれたひとつの絵 少し滲みかけてきてる
僕の涙でそうなって これ以上は消えてしまいそう
「これが最後の一枚かな」って
潤んだ目で呟いた
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